ショッピングモールの社会史 斉藤 徹 (著)

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ショッピングモール・ショッピングセンターは、アメリカで誕生、発展し、世界中に普及した商業施設の一類型。現在も急激に消費社会化する新興国で巨大センターが建設されている。

ショッピングモールの社会史(斉藤 徹著、彩流社)はそのショッピングモール・ショッピングセンターの通史であり、社会的、文化的視点からこのまさに大量消費社会の申し子ともいえる施設を照らし出す。

本書ではまず、ショッピングモールの原型ともいえる、中東イスラム世界における「バザール(トルコ語で市場の意)」や、ヴァルターベンヤミンの論に名高いパリの「パサージュ」などとの類似点と相違点を挙げる

そして、道路沿いの大型ショッピングモール誕生の必須要件といえる、モータリゼーションや郊外化との関連、モールの産みの親であるジョン・ジャーディやビクター・グルーエンらデザイナー、建築家たちの仕事について解説。その後も世界中で爆発的に広がり、買い物のみならず一大エンターテインメント施設として拡大の一途をたどることになるショッピングモールのいくつかを紹介する。

日本のショッピングセンターの歴史も、先史である駅の地下街や百貨店から、高度成長期に本格的に取り入れられた郊外型センター、そして2000年代、大店法改正による乱立などまで振り返る。

さて、ショッピングモールの形態といえば、建物の各界、ぐるり囲む通路にテナントを配し、中央部に吹き抜け、最下層に広場やフードコートなどを置く「あの形」がすぐに思い浮かぶ。グルーエンの言葉として本書の冒頭で効果的に引用される「現代になって創造された数少ない建築様式の一つ」という言葉は、妙な説得力を持っている。

実は、アメリカでの開発当初から、ショッピングセンターにはハワードの「田園都市論」にも通じる「理想の街づくり」の構想があった。アメリカでも日本でも、現実に翻弄されつつ、何度も形を変えて蘇っては消えていった思想である。

利便性の高いショッピングモールだが、批判的な声を聞くこともまた多い。画一的なデザインは個性のない街を生み、景観の破壊の原因とされることがある。また、巨大モールが個人商店、商店街の衰退原因とも語られるのもご存知の通りだ。

ショッピングセンターが、家族連れを、お年寄りを、マイルド・ヤンキーを、みんなまとめて、問答無用で集めてしまう吸引力、魅力と裏返しの弊害なのである。

本書は、ショッピングセンターの「初の通史」としての価値だけではなく、「街づくりとしてのショッピングセンター」の思想に、再び光を当てたことに意義がある。数々の批判に目を向けながら、そのパワーを積極的に評価し、少子高齢化、人口減少にある日本で、「高度成長型」の次ステージとしてのショッピングセンターの可能性を探る試みでもあるのだ。

ショッピングモールが好きな人(実は好きだけど言えない人も)、また嫌いな人(嫌いだけど実はよく行く人も)、ショッピングセンターへの、愛憎半ばする複雑なまなざしの正体を探ってみてはいかがだろうか。

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