世界でいちばん働きがいのある会社(マイケル C. ブッシュ&GPTW調査チーム 著、日経BP)


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「世界でいちばん働きがいのある会社』(マイケル C. ブッシュ&GPTW調査チーム 著、日経BP)の著者は、「GPTW(グレート・プレース・トゥ・ワーク)」の代表。GPTWはその名の通り、「働きがいのある会社」のランキング等を毎年公表している調査機関だ。

本書は、そんな著者がたどり着いた現代における理想的な企業の姿として「全員型働きがいのある会社」の在り方を提示する一冊となっている。

<h2>読みどころ1 全員型じゃなきゃダメなのだ</h2>

著者らが推奨する「全員型働き甲斐のある会社」とは何か。

まずここで整理されるのが、従業員が「働きがい」が感じるための要素である。

給与や労働時間、休日など、大文字的な雇用条件は当然これにあたる。

のみならず、働くうえで「自分が尊重されている」と感じられること、意見を聞いてもらえること、会社の意志決定に参加していると実感できることなど、ソフトな条件もまた重要となってくる。

では、とくに著者が強調する「全員型」は何を意味するのだろう。

ここで重要な主張は、ある社員にとって「働きがいのある会社」であっても、ほかの社員が大きな不満を持っているとすれば「全員型働きがいのある会社」ではないということだ。

すなわち、役職や年齢、ジェンダー、人種などに関わらず、その会社のスタッフが各々自分の持ち場で働きがいを感じられるのが「全員型働きがいのある会社」ということになる。

たしかに思い当たるところはある。

メディアに頻繁に顔を出す名物社長や幹部社員がキラキラしていても、その実、従業員の誰か(ほとんど?)が働きがいを感じていない職場は少なくなさそうである。

いまひとつ重要なことは、自分自身が現在、不当な立場に陥っていなくても、自分以外の誰かの不遇が放置される状態であれば、「明日は我が身」と思わしめ、ロイヤリティを毀損してしまうということだ。

<h2>読みどころ2 「炎上」と新たなリーダー像</h2>

著者は従業員すべてが働きがいを感じながら、持てる能力を十全に発揮する「全員型」の企業は、成長スピード、株価、生産性、離職率などに顕著なよいデータが出ていると主張する。

とくに現代において、全員型の会社が求められる傾向が強まる理由の一つとして「ネット」を挙げられている。例として挙げるのがUberの(元)CEO、トラビス・カラニックのドライバーへの暴言動画がSNSで拡散、社を揺るがす大打撃を与えたケースだ。

内部からの情報がyoutube動画のような生々しい形で周知され、従業員、顧客、投資家などステークホルダーに瞬時にして影響を与えてしまう。それが「全員型」が社会的に求められる傾向に拍車をかけているというのだ。

また、カラニックの「暴言」のようなマイナスなふるまいを避ける(カメラがありそうな場所でいわない、みたいな)だけではなく、差別などの社会的問題に社としてはっきりと立場を示すことが求められるのだとも論じる。その場合、意見を異にするステークホルダーが離反する可能性はあるのだが、そのほうが長期的に企業価値は向上するとの主張だ。

さらに、理想のリーダーの在り方にも変化が生じる。

カラニックのような激情型、ときに独善的にゴールに向け突き進み、部下を叱責、ののしるタイプの「やんちゃ坊主」系のベンチャー経営者の時代は終わると指摘しているのは興味深い。昨今のテック企業経営者を見るにつけ、異なる意見を言いたくもなるのだが、今後の展開により証明されていくことだろう

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