この1冊で「基本」から「キャリアアップ」までわかる 成功するWebライターの仕事術(日本実業出版社)
最近目にすることが増えた「WEBライター」という職業名。
webライターとはその名の通り、ウェブにおける書き手。ニュースサイトや企業オウンドメディア、メルマガやブログ、ランディングページなどなどWEB上のテキスト作成を行う仕事だ
WEBライターとはいかなる職業なのか、そしてどのように稼ぎ、食べているのか(本当に食えるのか、をふくめ)。その実相が描かれる実用書が『この1冊で「基本」から「キャリアアップ」までわかる 成功するWebライターの仕事術』(日本実業出版社)である。
見どころ1 ウェブライターの心得集
本書では、WEBライターとして活動するためのノウハウをくわしく解説している。
たとえば仕事の取り方。クラウドソーシングへの応募、制作会社への企画持ち込み、人の紹介、SNSやブログでの発信などを挙げ、それぞれノウハウを解説する
中でもWEBライターときわめて親和性の高い仕組みが「クラウドソーシング」。
いわば発注者とライターの”出会い系”のように、文章が欲しい人と書きたい人をつなげ、小さな仕事から大きな仕事まできめ細かくマッチングする仕組みだ。このクラウドソーシングサイト、すこし覗くと、実に多種多様なテキスト作成案件の募集があることに気づく。確かにこれまで雑誌などで書いていたライターと比べると、仕事を取るのはあきらかに容易である
読みどころ2 クラウドソーシングの両義性
本書では初心者が仕事を取るために有用な仕組みとしてクラウドソーシングを使った仕事の取り方をとくに詳細に解説している。
それもそのはず。種明かしのようだが、この本、監修はクラウドソーシングの代表的企業「ランサーズ」。「クラウドワークス」と並ぶ最大手で、WEBライターの多くが登録していることで知られているサービスだ。
つまり、本書は基本、クラウドソーシング会社がWEBライターの働き方を称揚し、増やすためにつくった本なのだ。
しかし実はクラウドソーシングには批判も多い。主な理由は報酬の低さだ
ライティングだと「1000文字200円」といった激安案件が並ぶことを揶揄されたりもしている。
そんな安い仕事を勧めるために本を作るとは。
こんくされ外道が!
弾はまだ残っとるがよ
といきり立つのは(気持ちはわかるが)早計だ。
本書はむしろ良心的な本だと思う。
なぜか
この本では、4人のライターのロングインタビューが掲載されている
以下の方々だ
・伊佐知美さん(トラベルライター・カメラマン・コラムニスト)
・西山武志さん(フリーランスの編集者・ライター)
・福島 槙子さん(フリーランスの元 編集者・ライター、現 文具プランナー)
・ヨシムラヒロムさん(フリーランスのライター・イラストレーター)
肩書を読んで気づかないだろうか?
専業の「WEBライター」は一人もいないのである
もともと紙の出版社や編プロで働いた経験のある人がほとんどで、紙とWEB両方で執筆し、自著の出版や講演活動、はたまたテレビ出演などで活躍する人もいる。
WEBを活躍の場にしていることは確かだが、決してWEBライターのくくりで収まってはいない。
ハッキリ言えば、WEBライターを無事卒業できた人、あるいはもとよりWEBライターではないがネットに進出した人を成功者として紹介しているのだ。
WEBライターの働き方を紹介する本で、図らずも「WEBライターは職業としては(いまのところ)成立しない」ことを述べてしまっているのでは?というイジワルな見方もできないことはない
本書は、激安WEBライター増加で得をする利害当事者?であるクラウドソーシング企業が出した本でありながら、「クラウドソーシングでWEBライターをやってウハウハ!ノマド生活!」などと言っているわけではない。
むしろ、クラウドソーシングをいかに「卒業」するか、WEBライターを皮切りにより収益性の高い仕事につなげることができるかが大きな課題となっていると言外に示すことで、WEBライターのリアルな「現在地」を見せてくれているのだ。
タイトルの「成功するWEBライター」とは何なのか、成功のためにどうすればよいのか、考えるための材料になってくれるのである。